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【排煙設備と排気設備て何のこと?】飲食店には必須の排煙と排気

・排煙設備と排気(換気)設備

今回は店舗建築に関する誤解の多い建築用語の一つ、「排煙」を取り上げようと思います。排煙は「煙を排出する」という字から、よく厨房や焼き肉などの煙を排出する設備と誤解されます。

一般的には建築基準法の排煙設備のことです。端的に言うと「排煙」は火事の煙を対象にしているということです。厨房や焼き肉などの煙を外に出す設備は、換気設備または排気設備といい、排煙設備と区別されています。

・排煙設備

排煙設備は、建物内の人が火災の煙に巻かれることなく安全に避難できるようにするために、煙を建物の中から外に出す設備です。建築基準法では、一定の規模、用途の建物に排煙設備の設置を義務づけており、「自然排煙」もしくは「機械排煙」による二通りの排煙方法のどちらかで排煙をしなければなりません。また、排煙は、通路やエントランスホールにも求められます。

自然排煙

自然排煙は開放できる窓を設けて煙を外に出す排煙方法です。下の画像は排煙窓とオペレーター(開閉する装置)の写真です。

下の図は自然排煙の排煙窓として認められるための基本図です。部屋の面積(壁芯)の1/50以上の面積の排煙窓を天井から80cm以内に設ければ法的基準をクリアできます。逆に言うと、天井から80㎝以内の開放できる部分(赤いハッチ範囲)が有効な排煙部分です。

また、その下の図のようにひとつの空間の場合、50cm以上の不燃材の垂壁(防煙垂壁)があると左右それぞれ別の排煙区画として扱います。その場合、排煙窓のうち垂壁の下端よりも高い部分だけ(赤いハッチ範囲)が排煙として有効な範囲です。

機械排煙

機械排煙は停電した時にも稼働するように非常電源を備えた排煙機による強制排煙です。

一般的に天井に非常時に開く開口を設けてそこからダクト(風道)で屋上などの外に機械で煙を出します。下の画像は天井の機械排煙口とそれが非常時に開いた状態の写真、そしてそこから繋がれたダクトの天井裏の写真です。

機械排煙には高額な費用がかかるので中型から大型のビル以外に採用されることはあまりありません。改修や用途変更でも非常電源の確保とダクトスペースの確保の問題で採用されることは滅多にありません。ですから、今回は機械排煙については詳細に触れないことにします。

 

・排気(換気)設備

排気設備とは室内、屋内の空気を排出して快適な環境にするための設備です。キッチンだけではなく、ニオイや煙がフロアにも流れたり、お店の外に漏れだしてしまうことを防ぐ役割を持っています。さらに、調理の際に発生する熱を排出し、働きやすい環境を作ります。調理をする際に出る煙や、油などの汚れた空気を排出する役割があるので、飲食店の場合は必ず設置する必要があるでしょう。

・排気設備の仕組み

排気設備は、煙や油、水蒸気といった汚れた空気を排出する目的で設置します。

下の図は排気設備の基本図です。

  • 防火ダンパー

火災が発生した際、排気ダクト内の温度が上昇した場合に、ダクト内の延焼拡大を防ぐために自動的に閉鎖する弁のことです。火災時に延焼を防ぐもののほか、煙感知器の発報に伴って作動する「望遠防火ダンパー」、不活性ガス消化設備を設置してある場所に取りつけられる「防火ピストンダンパー」など、設置する建物によってさまざまなものがあります。

  • 排気フード・フィルター

排気フードは調理する場合に出る煙や湯気・油脂の空気を不燃性のステンレス板で、天井から蓋状に覆い各種煙や煤等を吸込み屋外に排気する装置です。

フィルターは排気フード内上部に逆三角形の容で、V字にグリスフィルターが取り付けられています。 油分を除去(油脂除去率約80%)し、排気ダクト系統に油分を付着させない為のフィルターです。

 

  • ダクト

排気した油脂を含む煙等を屋外に導くための風の道です。

 

  • 排気ファン

厨房内の排気フードで集煙した煙等はダクトを通じて、排風機(ファン)屋外に放出する機器です。

・ダクトの必要性

上記の③ダクトは煙や油、水蒸気といった汚れた空気を排出する目的で設置しますが、それ以外にも近隣の住環境に配慮するために設置されることがあります。飲食店といっても業態は様々あります。カフェやバー、レストランや居酒屋、焼肉屋にラーメン屋、すべて飲食店ですが、すべて内容が異なり、調理する物も違います。ここで注意すべきは、それぞれのお店から発生する煙や臭いの量です。カフェやバーであれば、お店の周りにいても煙や臭いを感じることは少ないと思いますが、焼肉屋やラーメン店であれば、その量は何倍もすると思います。ダクトが住環境に配慮する意味とは、それらをダクトを伸ばすことによって、周囲に迷惑が掛からないように逃がす役割を持っているからです。ダクトの吹き出し口には【直出し】か【屋上出し】の2種類があり、とても重要であるため、それぞれの特徴と役割を確認しましょう。

 

直出し

外壁に穴をあけ、そのまま排気口を設置するやり方。

ダクトを最小限で作ることが出来るので、費用が安く済む。しかし、飲食店の高さからそのまま煙や臭いを排出するため、周囲に充満し、近隣からクレームが来やすい。カフェやバーなどの、排出量が少ない業種に向いている。

 

屋上だし

ダクトをビルの壁に這わせ、煙突のように屋上まで伸ばして排気口を設置するやり方。

こちらは長いダクトが必要になるので、費用が高額になります。ですが、煙や臭いを高いところから排出するため、周囲への影響は少なくなります。焼肉店やラーメン店など、排出量が多い業種に向いています。

 

・ダクトを設置する場合の相場

ダクト工事に必要な予算は、店舗の状況や業種などさまざまな条件で異なります。

5万円~300万円と非常に幅があるので、見積もりを依頼する必要があるでしょう。

建物の階数が多いほどダクト工事の費用がかかります。ダクトを設置する位置によっても費用は異なり、1階に設置する場合と、2階以上、屋上に設置する場合などで費用には違いがあり、一般的には階数が1階上がると20万円ずつ上乗せされるとされています。

新店舗で新しくダクト工事を行う場合には、注意しましょう。

 

まとめ

飲食店では、種類にかかわらず調理をする場合、必ずダクトを設置する必要があります。

煙やニオイの軽減や、お客さんや従業員が過ごしやすい環境にするため、また、防災の観点からも、設置する種類を選んで優良業者へ工事の依頼をしましょう。